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Blogスタッフブログ

2026/04/27

社長

それは初恋にも似ていた。

それは初恋にも似ていた。 アイチャッチ



こんなにも胸が高鳴るのは、いつ以来だろう。


私は思わず足を止めて
振り返ってしまった。

似ていたのだ。

遠い昔、まだ幼さの抜けない思春期に、
胸の奥をやたらと騒がせたあの人に。


もちろん、本人であるはずがない。
風のうわさで、
遠い北国で幸せに暮らしていると、
そう伝え聞いている。

初恋の人に、街角でばったり再会。
そんな都合のいい偶然は、
そうそうあるもんじゃない。
運の悪い自分なら、なおさらに。

それでも、
横顔の角度、
少しだけ伏せた目元、
何気ない仕草が、
どうしようもなく懐かしい。


ああ。
あの日と同じだ。


そう思った瞬間、
胸の奥にしまっていた古い記憶が、
忘れていた熱い想いと共に蘇る。


夕暮れの校舎。
放課後の静けさ残る廊下を歩く。


下駄箱の前で、
あの子に気づいていないふりをしながら、
上履きを取る。

言葉をかける勇気も持てなくて。

いつか渡したくて
学生カバンの奥底にしまい込んだラブレター。


その「いつか」とやらは、
一向に来る気配もない。
自分が勇気を出さなきゃ、
渡せやしないよ。
いつまで経っても。

そんな言葉が頭を駆け巡る。

あの頃の僕は、
不器用だった。照れ屋だった。ピュアだった。
ダサかった。

強がって、格好をつけて、
誰にも悟られないように振る舞いながら、
彼女を密かに想っていた。

遠くから眺めていた。



そんな一学期の終業日、
彼女の転校を知る。
鳥取を離れ県外へ行ってしまうってさ。

外は蝉がうるさく鳴いていて、
明日からは楽しい夏休みだというのに、
僕はちっとも嬉しくなかった。

彼女と会える最後の日だと知った今日も、
ラブレターは鞄の奥底で眠ったままだ。

あまりの臆病さに、不甲斐なさに、
我ながら呆れもする。

そして、僕は自分に問いかけた。



いいのかよ、それで。
今日を逃したらもう2度と、
この想いを伝えることはできないんだぜ?
フラれるのがそんなに怖いのかよ?
そんなにちっぽけなプライドを守りたいのかよ?

ワルどもとケンカをする度胸はあるってのに、
好きだって伝える度胸は無いって
どんだけチキンだよ?

そうやってこれからも
出来ない言い訳を探して生きていくのかよ?



悩んだ末に結局、
俺は想いを伝えることは出来なかった。
ただ、しまい込んだラブレターだけは
彼女の下駄箱に入れることができた。

ダサいけど、
俺の勇気はここまでだった。

彼女がラブレターを見たかどうかも分からない。
38年経った今も、
返事は聞けないままでいる。


まあ、そんなもんか。
初恋なんて。

そう割り切るには、
大人になる時間が必要だったよ。


そんな昔話を思い出すほど、
懐古主義ではないつもりだけれど。。。


忘れたふりをしていただけで、
本当はまだ、どこかに残っていたのかな?

あの頃、言えなかった言葉。
直接渡せなかったラブレター。
後悔って言う形できっと残っていたんだろう。

忘れかけていた淡い想いが、
胸の奥で、少しだけ芽を出していた。


とはいえ、もう50歳のイイおっさんだ。
今さら恋だ愛だと浮かれる歳じゃない。

いろんなことを覚えた。
いろんなことに慣れた。
いろんなことを諦めた。


それでも、
たったひとつの面影に、
心がここまで揺さぶれるだなんて。

 

その人は、私のことなど知る由はない。
たまたま初恋の彼女に似ていただけ、
すれ違っただけの、名も知らない人。

それなのに私は、
遠い昔の僕と、
初恋のあの子を重ねて見ていた。

私はもう一度だけ、
あの不器用で、青臭くて、
どうしようもなく切ない時間に、
手を伸ばしてみたかった。





私は、静かに口を開いた。
あの頃は持ち合わせていなかった勇気と共に。
















■三宅
「……みたいな。
初恋に似た人に偶然出会ってしまった、そんな設定で、
水割り濃いめに作ってもらえます?」



■スナックママ
「めんどくせーわ」



~完~

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